ドラマ「風間公親 -教場0-」の否定的感想が増えている中、見続ける理由

2023年冬ドラマに比べて、現在放送されている地上波の春ドラマは、私としても我が家にしても見る本数が多い。と言っても家族のスケジュールがバラバラなので、揃ってのリアルタイム視聴が難しく、テレビ内蔵のHDDに録画し、週末などの全員揃う時間帯に再生して見ている。

さて、2020年1月初めに2夜連続で放送された「教場」、翌2021年1月には「教場Ⅱ」が同形態で放送され、どちらも見ていた。当時確か、「キムタクの新境地」など、それまでの彼の役イメージを覆す、警察学校の冷徹教官役が新鮮との声が聞かれ、確かに「珍しいな」と思っていた。そもそもこの時点で、正月の浮かれた雰囲気の中に流す内容なのかという意見もあっただろうが、1夜目の放送を見て家族みんな「明日も見る」と意気込んでいた。そして現在放送中の風間教官が教官になる前を描いた「風間公親 -教場0-」が決定した時には、「これは録画リスト確定だな」と期待していた。「教場0」も初回から2話目あたりまでは、割と好意的な感想が多かったように思うが、メディアが勝手にライバルに仕立て上げた福山雅治大泉洋のW主演「日曜劇場 ラストマン -全盲の捜査官-」と比較され始め、今や「善のラストマン、悪の教場」という風潮に仕上がりつつある。もちろん、およそ2話単位で視聴率を狙った指導を受ける刑事役にゲスト俳優を起用したりするので、それを期待していた人もいるだろうし、原作や漫画との違いに途中でドロップアウトしたり、それは様々だろう。しかし、メディアの「福山の圧勝!」だの「ラストマンのメッセージ性」だの、どうにも日曜劇場を忖度するような記事が山のように出ていくるのを見ると、なんだか哀れになってきた。ちなみに、家族を含め私も漏れなく「ラストマン」を「教場0」と同じぐらいの期待度で視聴しているし、実際「面白いな~」と感じているので、今回は「教場」の援護射撃をしてみたい。

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教場0の主な否定的コメントとそれに対する私のプチ反論

  • 内容が暗くて陰湿で月曜の夜から暗い気持ちになるので見たくない。
    →それは「教場」「教場Ⅱ」のときからわかっていたことで、趣向にそぐわなければ見なければいいのでは?全体的にシリアスな雰囲気で構成されているものの、堀田真由演じる伊上幸葉の存在は、とりあえず合間合間のチャラっ気にはなっていると思う。

 

  • 風間教官の指導方法がパワハラ過ぎて無理!怖い!
    →およそ一般人が知る由のない警察学校の様子や指導方法については、私には真偽はわからないが、原作者も取材の上で描写しているだろうから、多少脚色されていても問題なし。「風間公親」はそういうキャラなのだから。確かに彼はどの新人刑事にもいつも厳しい口調で接しているが、少なくとも捜査において間違った方法論は教えていない(はず)。ツンデレの”デレ"の部分は決して見せないが、車の運転を任せる描写を含めて、ごく偶にだけど褒める言葉も発しているし。

 

  • 予告で大物ゲスト登場を告知しといて、活かしきれていない。
    →もちろんそういったゲストの起用にはスタッフを含めて事務所等の意向もあるのだろうが、100%の適役はありえなく、ゲストが誰かで視聴するかどうかを決めるのは違うのではないかと。制作側はもちろん視聴率込みで登場させている節もあると思うけど。俳優にもそれまで演じてきた役のイメージを踏襲したい人もいれば、イメージを覆すような役どころを演じたいという人もいるのだから。

 

  • 毎回犯人がわかりやすすぎて、ミステリー感が希薄
    →冒頭に犯行シーンや名脇役などの俳優を映し出しているので、犯人はほぼ特定されていて、それを終盤で追い詰めるのは「古畑任三郎」スタイルなのは周知の事実。違いといえば、捜査や思考で追い詰めるのは主人公ではなく、指導されているゲスト演じる新人刑事だということ。風間教官はあくまでそのヒントを与えているに過ぎない。このドラマは謎解きを楽しむものではなく、新人刑事が悩みながら右往左往するのを優しく見守って励ますドラマであり、風間教官が"デレ"を見せてくれる日が来るのかを心待ちにするドラマである。

 

  • 実際に交番勤務している警察官を蔑視している台詞じゃないか
    →これについてはもう世の中のそういった言葉に対するチェックが厳しくなっているので、たとえドラマであっても物言いがつけられるのだろう。そこだけ切り取れば、確かにいきなり退職(正確には転属)勧告しているように見えるしね。しかし、あくまで演出上の表現であり、風間教官は「(現状では)刑事は無理だ」と言いたいだけに過ぎない。実際、元の部署やもっと活かせる部署を提示したりするし、届け出の紙を常時準備しておいて手渡すというおなじみのシーンに、その場で無理やり書かせるとまでは及んでおらず、猶予はもたせている(はず)。まあそこまでして追い込んでおいて、捜査の仕切り直しというか方針転換を促せるのが目的なのは明白なので。そしてお決まりのように、すんなりとそれに応じる刑事はおらず、いろんな背景を経て結局は風間教官に「君はいい刑事になる」とか「君はいい目を持っている」という言葉を言わしめることに成功するのだから。(同時に「君の弱点は○○だ」「君には見込みがない」という言葉も受けるのだけど)

とにかく暗すぎて無理な人へ

所詮「ドラマ」であり「エンタメ」なので感情移入せずに、「ふーん」ぐらいで俯瞰して視聴すると楽。風間教官はこれまで一度たりとも笑顔を見せるシーンがない。ずっと仏頂面。その昔90年代に放送された「振り返れば奴がいる」でも若き頃の織田裕二が冷徹で傍若無人な医師役を演じていたが、それでもニヤリとしたり不敵な笑みをこぼすシーンはあった。対して今回の木村拓哉はそれすら皆無であり、カメラが回っている間ずっとあの表情で演じているのが大変なのでは?と勘ぐってしまうぐらい徹底したキャラに出来上がっている。もちろん彼以外の俳優さんであったとしても、そういう役作りはできるのだろうけど、いわゆる皆が連想する「キムタク像」(※あくまで役の上での)が苦手な人は、新鮮味が多少なりとも味わえているのではないかと思う。彼も気がつけばすでに50歳であり、バラエティ番組などで見る彼は、世間一般の50歳とは思えないぐらいやはり若い。「教場」シリーズでは色眼鏡と白髪混じりで老け込ませているキャラに仕立て上げられているが、別に似合わないわけでもないと思う。むしろ、1クールの連ドラが無理ならば、以前のように年1回とか半年に1回でもよいので、続けて欲しいのである。生徒や新人刑事の設定や人材は山ほどあるはずだし。

余談ではあるが、うちの子供達は「教場」を恐怖心を持ったりなどの拒否反応は今のところ持っていない様子で、きちんと「エンタメ」として見ているっぽい。「君にはここを辞めてもらう。これにサインして持って来い。明日か明後日か?何なら今でもいい」というお約束のセリフを実生活で転用できないかと考えている。(※もちろん対外的にはそんなことは一切口走らず、あくまで家族等の「教場」を見て知っている人に対して)また、妻は、視聴中に居眠りするなど「教場」のテイストに興味が薄れてそろそろドロップアウトしそうな気配ではあるので、そういう人は無理せず明るいドラマをお楽しみください。