声の主は聞き覚えのあるあいつだった

先週末、以前会社見学に行ったタクシーB社の求人をIndeedで見つけたのでポチった。会社見学のときには、公式サイトからの問い合わせメールでファーストコンタクトを取り、社長自らの説明会の際には名刺もいただいていたので連絡先も知っているのだが、当時、「他業種に内定が出たのでそっちに行きます」的な理由で応募を辞退した経緯があるため、「1ヶ月働いてみてダメだったので次点だった御社に応募します」的な理由で連絡を取るのは気が引ける。

Indeedに載っていたそれは会社直の掲載ではなく、タクシーアプリGOが派遣紹介と称したものだったので、GOが仲介してのやり取りとなるようだった。

そう言えば一度、春先ぐらいに別の大手転職サイト上でGOからタクシー運転手のオファーが来たことがあり(それまでも個別のタクシー会社からオファーも結構届いていたのだが)興味本位で返信したら、GOの転職支援事務局の担当者から電話がかかってきたことがあった。
もしタクシー運転手に応募するのなら、希望条件としては週休2日、昼日勤のみ、自宅近辺ということがあったので、その旨を伝えると、知っていた近くのC社を提案してきた。ネット上のタクシーの口コミは、真偽はともかくとして乗車拒否、マナーが悪い、運転が荒い、交通ルール無視などの否定的なものが9割以上書かれているが、C社は特に悪い評判だったので、「眼中にない」と伝えた。
その時の担当者は女性で、声から察するに若い人と思しき人だったMという人物だったのだが、当時の電話での会話から良い印象を持たなかった。

というのは、

・最初の「お世話になっております。◯◯の△△~」的な挨拶は普通なのだが、それ以降の会話に丁寧さが欠けている。(相槌に頻繁に「うん」を使う、割と早口で軽い口調など)

・こちらの個人情報はサイトでの登録情報である程度把握しているはずなのに、その内容の質問をする。しかも勝手にテンパるときがある。(◯◯さんはえーっと、あ、ちょっと待ってください、カチャカチャ、あ、大丈夫です)

・C社から何かしらのプッシュを受けているのか、こちらの意向を残念がり、「希望条件に見合う会社はC社の他になかなかない」と言う。確かに隔日勤務が主のタクシー運転手で、週休2日の昼日勤はあまり人気がないだろう。しかし探せば全くないというわけではない。

・その時もこちらが気になっているB社についてはどうか尋ねてみたが、「B社についてはGOを導入しているものの、弊社の転職支援サービスには入っていないので、現状紹介できない」と言っていた。

・GOの転職支援サービス経由で入社すれば、初心者にも安心の3ヶ月間のサンキューチケットなるもの(GOの優先配車券みたいなもの?)が受けられることをアピールしていた。(後にほとんど有効性がない眉唾ものの制度だとわかった)

・底辺のタクシー運転手を紹介してやるんだし、こっちも親身になって担当するつもりもないから、というニュアンスがどうしても伝わってくる。

という感じだったので、結局「まだ本格的に検討する段階ではないので、また機会があればお願いします」ということを伝えて電話を切った。

そして今回のB社への応募について、今日、メッセージではなくいきなり電話がかかってきた。スマホの電話帳に登録していなかったので見知らぬ番号だったのだが、出てみると「GO転職支援事務局のMと申します~」と、例の軽い声が聞こえた。

  ゲッ!またあいつか!(心の声)

「今回B社への応募意向ということでお間違いないですか~?」
「以前にお話したC社は次点でということで?」

  学習能力のないやつだ…(心の声)

C社は眼中にないと言ったはずだ。しかしそう言ってくるということは、以前の電話面談の記録は残っているのだろう。

  「以前に会社見学に行ったことのあるB社一択なので!」

そう返した。
こちらはB社への応募のみが用件であり、他の会社を紹介して欲しいとは思っていない。やはりC社を推したいようだった。
その後、面接日程の段取りなどの説明があったが、その最中でも例のテンパリ音が受話器から聞こえてきた。
割と短めの会話だったのだが、切ろうとしたときに意地悪な質問をしてみた。
「以前、C社のときはサンキューチケットの優待があるとお聞きしましたが、今回は対象外なのですか?」と。
すると、「えーっとエリアが…ちょっと待ってください…(何の時間?)あ、はい、ありますよ~」と答えた。
別に期待していなかったが「そうなんですね、わかりました」と電話を切った。C社のときはあんなにアピールしていた制度なのに、今回はこちらが尋ねるまで言及がなかったのはどういうことなのだろうか?

いずれにせよ、GOの転職支援事務局には良い印象がない。紹介を経由するとB社にも費用負担が発生するだろうから、直接B社の社長にコンタクト取ったほうが良かったのかな。でもそこまで気を遣う必要はないかな。

仕切り直しと背水の陣

想定していたよりもすんなりと契約終了ができてホッとしたのも束の間、このまま再びじっくりと転職活動に勤しむわけにもいかず、タクシー運転手の道しかなくなってきた。
PC事務経験が長いのでデスクワークができないわけではないが、事務職でさしたるキャリアやスキルを持っているわけでもなく、何より何日先、何十日先、何ヶ月先を見越した計画性が必要とされる業務が合わない性分なのはわかっている。先を予測してしまうから、繁忙期や期日のことを考えると気が滅入ってしまう。こなせないわけではないがプレッシャーや不安感、責任感に苛まれて落ち着かなく。とにかく一日で完結するやっつけ仕事の方が向いているようだ。
運転自体は苦にならないのでドライバー職がいいなとは思っているが、配送配達などの物流関係は未経験かつ体力的にも持たないだろうし、トラックの運転についても中・大型免許や技術がない。おまけにAT免許だし。普通乗用車に拘っているというわけではなく、大型車両は慣れの問題ないのかもしれないが、観光バスや長距離トラックで頻繁に他府県などの遠方に行ったり、時刻表どおりに運行しなければならない路線バスもストレスが多そうだ。

「タクシーは稼げない」、「いやいや人によっては稼げる」という声も聞く。中高年から始める最後の仕事の代表である一方、最近は新卒の若者の選択肢にもなっているとも聞く。傍から見れば、ただ客をおよそ短時間乗せて運転して、客待ち時間に車外で同業者とタバコを吸いながら談笑しているイメージの気楽な職種に高待遇なイメージがない。墓場と称する人もいるらしい。とにかくマイナスイメージが強い。
ただ、共通するのは、組織にとらわれず個人の頑張り次第で収入は加減するということだ。タクシー業界はそんなネガティブイメージを払拭しようと、どこの会社も躍起になって宣伝している。良いところばかり書かれている。そんな中から自分に合うところを見つけるのもまた難しい。

うまい話にはやはり訳があった

この1ヶ月間、正直モヤモヤしながら働いていた。
もちろん頑張る気持ちは多分にあったし、多少の苦労は当たり前と思っていたし、せっかく30倍の競争に残った仕事を簡単に手放したくはなかった。けれど、身体が持たなかった。

前回のエントリーで勤務条件を書いてみたが、実態はいろいろと違うことが気になっていた。加えて、役員のまるで掴みどころのない人間性が自分には解せなかった。

 

まず、勤務条件についての相違。

・完全週休2日制(土日)
→基本そうだが、役員が外せない業務(といってもくだらないパーティーや冠婚葬祭)のときは土曜日出勤あり。休みを平日に振替えられる場合は振替えるが、役員スケジュール都合によるので欲しくない日に振替えられる。しかも月をまたいでの持ち越しはできず、同一月内での消化。振替えできなければ(超勤扱いのような)報酬に上乗せ。

・プライベートの運転は皆無
→確かに役員家族の送迎は無かったし、一度も会ったことはない。
ただ、現愛人に加えて元愛人ともつながりがあり、およそ業務とは言いづらい私的な移動(買い物、デート)は担わされる。

・スケジュールの共有が不正確、不明瞭
→カレンダーアプリには予定が共有されているが、場所や手段が明記されていないものが多く、スケジュールの色分け種類が多岐にわたり、いったいどの予定に車移動が必要なのかが不明。「◯◯(社名)会食」と書いてあったが、実際は愛人との食事デートの予定といった具合。「打ち合わせ」や「会議」と書いてあるので、車で外出するのかと思っていたらリモートで済む案件だったとかで乗らず。

・遅くに不便な場所で終業を言い渡され、帰りの電車賃も自腹
→今思えば、面接のときはあまり詳しく説明されず濁されていたような気がするが、基本、一日の終業地は隣接県にある役員別宅になり、そこから20分かけてターミナル駅まで歩いて電車に乗る羽目に。電車賃は自腹。しかも終電前など遅い時間帯がしばしば。一度本当に終電ギリギリだった。これが週に1回とかならまだ許容できるが、ほぼ毎回であり、その日のうちに本社や自宅に戻って終業ということは数えるほどしか無かった。

 

以下は労働環境について。

・役員の生活サイクルが異常
→9時に出社し、午前中から昼過ぎにかけては本社で仕事し、その後に車で隣接県にある他の事務所や取引先を回るパターンが基本。午後は仕事の日もあれば愛人と会う日もある。愛人の日は決まって最後、隣接県にある別宅へ連れ込むので、自分の業務は終了。そこで前述のように放り出される。ただ、ここからが異常で、前夜どんなに会食や二軒目で酒を飲んでいても、愛人と絶倫行為をしても、深夜3時とか4時には自分で運転して自宅に戻り、9時に何事もなかったかのように出社している。マジでショートスリーパーなのかと思った。

・経営者論、ビジネス論、男性論など持論を語りかけてきて同調を促される
→前職の一回りしたの役員との車内での会話は必要最低限で、後部座席では電話してたり、スマホで動画見てたり、飲食したり、寝てたりということがほとんどだった。今回の役員は、本社を出発すると到着まで、毎回必ず世間話や時事ネタを皮切りに、自分の考えやポリシーなどを自慢話や武勇伝を交えて話しかけてくることが苦痛だった。口調を荒らげたりはなかったが、「そうなんですか!?」「すごいですね!」「そうですよね」という返答しかできないぐらいな内容で、反論ぽい返しだと「それは違うんですよ」と否定される。半月程経ったぐらいでは、「もしかしてこの人は妄想癖があるんじゃないか?」「本当の話か?」と疑ってしまうぐらい、自分はすごいんだぞ感を醸し出してくるのが滑稽。

・「経費を意識するように」と言われたが、実際はただのケチ
→最初に「運転手としてもガソリンを始めとして、不必要なアクセル踏み込み等せず、会社の経費なので意識を持って」と言われた。もともとスピード狂ではないので不用意にアクセルを踏んだりすることはなかったし、ハイブリッド車だったのであまり意識していなかった。というのも、前職でも今職でもガソリン代や高速道路のETC代は当然先方持ちなのだが、前職役員は効率重視だったため、任意のスタンドで給油してきても問題なく(しかもハイオクガソリン車だった)、基本通勤に車持ち帰り可であり、自分の自宅近くのコインパーキングに一晩停めた駐車代も預かった小口現金から支払っていた。夏は暑いし冬は寒いので、待機中はいつでもアイドリングしててよかった。通勤に電車に乗る必要があった日には、立替えた交通費を請求できた。
ところが、今役員はそうはいかず、まず待機中はエンジンを切らされる。この時期なのでものの数分で車内温度は急上昇し、窓を開けずにはいられない。もはや車から降りたほうが涼しいと感じるぐらいだが、車から離れるわけにもいかない。かと言って路駐して離れればミドリマンの餌食になるし、どこぞのコインパーキングに入れれば駐車代は自腹。当の役員は、降車時に「日陰とか涼しい場所で(待機しておいて)」と言うが、この時期の日陰なんて焼け石に水で酷暑に変わりはない。日陰を求めて彷徨うと、今度は呼び出されたときにすぐに駆けつけられなくなるという矛盾。
そして異様に燃費を気にしていて、メーター内の平均燃費が0.1落ちたのを気づき(この時は2時間の待機中に暑さで我慢できず、アイドリングしたまま寝ていた)、チクチクと燃費について語りかけてくるのだ。前職役員は自分で運転することが嫌いだった性格もあり、役員車のメーターや状態については無頓着で、最低限自分が行きたいところ時間に移動できれば済んだのだが、今回の役員は毎日一度は自分でもハンドルを握るので、車の状態の変化にはすぐ気づく。燃費然り、車体や車内の汚れ然り。

・役員が乗っていないときの業務移動に高速道路が使えない
→これも前職との比較になってしまうが、前役員はガバガバだったので高速は乗り放題というか、効率重視なので下道でタラタラは逆に不満を抱くようだった。しかし今回は違って、役員が半日ほど出先で籠もる必要があった間、一度本社に書類を届けに往復するよう指示を受けた際、「下道で」と言われたのだ。幹線道路とはいえ片道1時間半弱かかったので、往復で3時間。戻って来て欲しいと言われた時間より1時間ほど前に着いて休憩しようかと計算して早めに復路についたら、途中「早く終わりそうだから。今どのあたり?」と電話がかかってきて、休憩時間の確保ができずに終わり、結局この日は待機時間がほぼなく、朝から夜までずーっと走らせていた。

・毎日洗車は当たり前なのか?しかし作業場環境が良くない
→役員車は毎日洗車するのは当たり前なのかもしれない。実際そう聞くし、そういう職種の人は常に車の清掃は欠かさないのだろう。
今役員も事あるごとに「あそこが汚れている」だの「フロアマットに泥や砂が」とネチネチ言ってくる。そして大抵汚してくるのは土日に役員がプライベートで運転し、どこに行ったかは知らないが、家族が汚したと思しき痕が見られる。こっちは細心の注意を払って運転しているのにも関わらず。
イカーですら手洗いをしたことのない自分には、毎日始業後にとてつもなく表面積のデカい黒の某国産大型ミニバン車を手洗い洗車するのはキツすぎた。
前職は前述のように無頓着なので、月1,2回ぐらいスタンドの洗車機にぶっ込んでいたが何も問題なかった(そもそも購入時点で中古車だったからかもしれないが)。
ところが、今役員は1~3年サイクルで同車種新車に乗り換えていると自負しており、機械洗車には掛けたことがないとのたまった。乗り換えるのは車種柄、値落ちが小さいからとか言っていたが。
そしてこの手洗い洗車をする場所は本社の駐車場なのだが、半地下で空調設備もない一番奥まった場所にあり、出入り口が1か所のみなので風通しも悪い。照明は非常灯とそれに似た光度の低い蛍光灯だけなので、黒色のボディに微々たるキズがあっても汚れがあってもパッと見はよくわからない。スマホのライトで照らしてみてようやくわかるかなぁという始末。スマホのバッテリー消費も自腹なのか?
洗車グッズは前任者が使っていたものを使っていいらしく、立て替え払いで補充してもよいとのことだった。なぜ洗車用品だけ立替え請求OKなのか?
洗車に慣れていないせいもあったが、毎回1時間半から2時間は要した。直射日光は当たらないが、作業すれば全身汗だくになり、下着は絞れるぐらい汗を含み、終わると屋外にある他店の室外機から出る生暖かい風すら涼しく思えた。
正午またぎの数時間はこの洗車時間で潰れ、そこから役員が突然乗り込んで来る時もあれば、1~2時間休憩できる時もある。休憩時さえ役員車のエンジンをかけることはタブーなので涼しい場所を求めることもできない。隣には通勤に使用しているマイカーを停めてはいるが、自分の車のガソリンをそのために消費するのも馬鹿らしくなってきた。
いざ役員がやってくると、タオルでしきりに汗を拭き、びちゃびちゃのワイシャツやスラックスのまま車を走らせるのだがそれに対して言及はされない。走行中はもちろんエアコンが効いているので一気に涼しいのがいいが、汗を大量にかいているので体から熱を急激に奪っていき、寒さを感じる。それで今度は待機中にまた暑くて汗が吹き出るという繰り返しなので体への負担が強く、汗をかきすぎるので背中や腰に汗かぶれができ、かゆみとの戦いも余儀なくされた。少し学んで、いつからか着替えの下着Tシャツを持参するようになり幾分ましにはなったが、汗を含んだ下着を袋に入れて鞄にしまい、拘束時間の長さから帰宅後にすぐ洗濯機にかけられず、衣類の臭い問題も生じた。

・ビッ◯モーターのようにパワハラはなかったが、陰湿な指摘

今世間を賑わせているブラックパワハラ企業ではないように思えるが、実際はよくわからないし知らない。しかし、ある時届けるように指示された書類を覗き見たら、別職種の社員(たぶん同じく雇用ではなく業務委託っぽい)の日報らしきものだった。
そこには始業終業時間はもとより、社用車のオドメーターを記入する欄、燃費の欄まで設けられていて、別の書類にはそれを統計化したランク付けみたいな評価表のようなものまであった。どこまで燃費に拘るのか…。
怒鳴られたり、蹴られたりということは一切なかったのだが、嫌味は時々受けた。
本社の地下駐車場はそんなに広くなく、最大7台が壁に沿って放射状に駐車できる感じなのだが、そもそも駐車場の形状が長方形とかではなくいびつな敷地であり、道路から短いスロープになっている出入り口も車1台しか通れない。駐車場の中に車が少ないときには、入り口で前から突っ込んで中の空いたスペースで切り替えして方向転換できるのだが、結構車が入っているとデカい車は中で方向転換できなくなる。駐車場は薄暗いしすぐにクランクの形状になっているので、外からは今何台車が居るのかはわかりづらいのだ。
ある日、役員が一緒に乗っていて頭から駐車場に入れようとした時に「中に車が多かったらどうするの?ここはケツから入れないと」と言われた。まあそれは正論だと思う。それで恐る恐るゆっくりと後進させながら、駐車場の中に入っていくと、いきなり別の車が停まっていて、衝突回避アラームがピーピー鳴るので一旦前進して切り返したときのことだった。「何してますのん?」「もしかして鈍臭い?」「私はどんな駐車場でも(切り返しなしで)一発で入れるよ」「役員運転手で入れられなかったら笑われますよ」と嘲笑された。「不慣れなのもありますし、万一ぶつけたり擦ったりするより、切り返した方が安全だと思うので」と返事するのが精一杯だった。何よりハンドルをぐるぐる回してる最中だったし。
別の時はただのコインパーキングでのこと、枠内から少しズレそうだったので、切り返したときも「何してますのん?」と言われた。
そんなに切り返しなしで駐車できることが偉いのだろうか?いったい誰が笑うのだろうか?「そんな(切り返しの多い)運転手を雇って」って笑う人などいる世界なのか?
全部勝手な被害妄想だと思うのだが、そんなカッコつけの役員なんて願い下げである。
もう一つ、「役員運転手が他の運転手と違うことはなにか?」と問われたことがあった。「安全にスケジュールどおり目的地まで到着することでは?」と月並みな回答をしたが、応えは「役員に出来るだけ歩かせないこと」と言われた。
それはそうなのだが、ある日、一方通行の幹線道路沿いにある建物の車寄せへの入り口に近づいた時、早めに到着したので入り口より3メートル程先の路肩に停車するように言われたことがあった。10~15分経った後、予定時間が来たのでそのまま降車して建物へ向かうのかと思いきや、「じゃあぐるっと回って(車寄せに)付けてくれる?」と耳を疑う言葉が。ぐるっと回れば右折が連続し、途中に信号が2つあるので引っかかれば5分程かかる。このまま降りて後ろに10歩ほど歩けばすぐ建物の入口である。どんだけ非効率なのか。それぐらい歩けよと言いたい。

1ヶ月で辞めます

そんなこんなで、交通費を始めとした様々な自腹を切らされ、朝遅い始業とはいえ拘束時間が長く、家族とのすれ違い(家で顔を合わせることが減った)が起こり、知りたくもない話を延々と聞かされる、最後は嘔吐し軽い熱中症になりかけ、この先社保料も自分で払わなければならず、月額固定の報酬から諸々差し引くと額面通りに見合った業務とは思えず、何より精神的<身体的に健康を脅かされそうなので、一昨日を以て契約終了を申し出た。そしたらLINEに「辞めると思ってました。ちょうど今日が締め日なので大丈夫です。返却物は近日中に返しに来てください」という無神経でそっけない返答があった。

ま、書面上1ヶ月単位の更新契約だったし、試用期間と思わせれば、もう1ヶ月我慢しようかな?と悩む必要もないし。
ただ、気になるのは契約書には報酬の振込みは当月分を2ヶ月後にって書いてある部分で、普通、翌月だろ?と思いながらまだ支払われるのか疑っている。

そういや、今日鍵などの返却物を返しに事務所に行ったら、地下の駐車場には役員車が出払っていて停まっていなかった。その時間帯を狙って行ったこともあるけど、マイカーを駐車していた場所には見慣れない車が停まっていた。たぶん辞めた(といってもまだその人物とはやり取りがあると言っていた)前任者を呼び戻したのだろうと推察できた。なんだ、自分がいなくなっても何も支障がない世界なんだね。
清々した。

悩んだ結果、もう一度だけトライを

役員運転手には辟易したはずなのに、業務委託契約のデメリットを身にしみて感じたはずなのに。

30人を勝ち抜いたチャンスだと思ったからなのか、まだまだタクシー運転手になるには惜しいと思ってしまったからなのか。

家族は例の役員運転手に採用されたことに安堵している。これ以上日中ずっと家に居て家族を心配させることはできない。

ただ懸念材料がないわけではない。

・今回も雇用契約ではなく業務委託契約であること
・通勤交通費が出ないこと
・役員の面接時の顔と業務時の顔が違ったりしないかなどなど…。

一方で魅力に感じる部分もあった。

・土日休みの完全週休2日
・年末年始、夏季休暇、GW休暇あり
・役員出張不在時に合わせて有給と称した休暇取得可
・役員のプライベートな運転は皆無

これだけでも前職のときと違うし、なによりアプリでスケジュール共有してくれるというではないか。

タクシー運転手は最後の手段として置いておいて、とりあえずはせっかくのチャンスに乗るかという気持ちで、A社とB社には応募意思がないことを伝えた。

勤務開始は7月からとのこと。
さて、心機一転頑張るか。

思わぬ横やりが入った

5月下旬、タクシー業界に決めようと思っていた矢先、某求人サイトである役員運転手の求人を見つけた。
確か2年ほど前に同じ媒体から応募して書類選考に通り、面接で落ちたとこだった。
「このタイミングでその時と同じ求人が出たということは、当時採用された運転手が辞めてしまったのか?」と思いつつ、今回はどうせ書類選考で(以前応募してきて落とした人間だということが)バレるだろうけど、ダメ元でポチったのが5月のある週末。
その後週明けには担当者から「面接に来て欲しい」という電話があり、耳を疑った。2年前を覚えていないのかと。

面接当日、指定された場所、建物、事務所入口までの導線、すべてに覚えがあった。役員室での一対一の面接。履歴書を見ながら喋ってるその役員の顔も2年前と同じだ。質問された事項も以前に聞かれたことと同じことが大半を占めた。違うのは履歴書に職歴が1行増えたことぐらいだ。
「この人記憶がないのか?いや、そもそも2年前の一応募者についてなんか覚えていないか?」
「それとも分かってて呼んだのか?」
意図が全くわからなかった。

合否結果は1週間ほどで連絡すると言われ、不思議な気分で帰宅したのだが、求人サイトをチェックしてみると最大30人程が応募していると表示されていたので望みはかなり薄い。

1週間ほど経ったが何も連絡がない。

10日ほどして電話がかかってきた。
「最終候補に絞った3人の内の1人があなたです。当社としてはあなたを考えているのだが、最終面接にもう一度来てもらうことはできないか?」という主旨だった。面接2回なんて選考フローにも記載されてなかったはずだが、いよいよ「あなた以前にも受けに来ましたよね?」と詰められるのかなと不安は続く。

当日、前回と比べて短時間で面接が終わった。内容的にも意味あるのか?と思うぐらい1回目と変わりなかった。
「明日明後日中には結果を通知します」と言われ、次の日に採用の電話がかかってきた。

約30人の応募者の中から意外にも残ってしまった。
タクシーに傾いていた心に迷いが生じた一日となってしまった。

タクシー会社に見学に行ってきた

普通自動車の運転を仕事にしたいと考えた場合、ほぼほぼタクシー運転手が真っ先に思い浮かぶのだが、二種免許が必要になる。
とはいえ、どこのタクシー会社も「乗務員養成」と称して二種免許取得費用は負担してくれるのだが、おおかた2年以内に辞めると返還義務が生じる。
では、普通一種でできる仕事といえば?というので見つけたのが役員運転手だった。
前職の一回り下の役員との相性が悪かっただけだと思い聞かせ、引き続き役員運転手の求人を探すも、そもそも求人数も少ないし、求人のタイミングも予測できない。
転職サイトではひっきりになしにタクシー運転手のオファーが来るし、もう役員運転手は諦めてタクシーに行こうと考え始め、あまり乗り気ではない妻にももうその旨を伝えていた。
ネットでタクシー運転手についてくまなく情報収集し、地元の2社を絞り込んだので、それぞれ応募の前に会社見学説明会なるものに参加した。

A社は2,3年前に移転したらしく、事務所建物も綺麗で、内勤者も6,7人は居ただろうか。対応に当たってくれた業務部長?のおっちゃんも親切だった。未経験養成にも力を入れているらしく、求人広告でも検索上位に来るし、SNS活動も駆使しているぐらいなので、大手ではないもののまあまあ有名かも。ただ、完全歩合制なのと、車で通勤しても自宅からはちょっと遠く、営業エリアも同じ市内とはいえ、自分には土地勘があまりないのが不安材料だった。

B社は自宅からも比較的近く、事務所も年季の入った内装外装ともにボロボロ、内勤者も事務と思しきおばちゃんが1人、モニターにつきっきりの運行管理係と思しきおっちゃんが1、あとは何代目かわからないけど若い社長1人だけという零細企業並みだった。規模が小さいからなのか、営業エリアを絞っていて、地域密着を謳っていた。ハード面の古さは否めないが、いろいろ説明してくれた若い社長の話を聞いていると、なんだか気になる存在になった。どこがどうとはうまく説明できないのだけど。

前職を辞めた理由

前回の転職活動の際、初めてその職種を知って興味が湧き、実際1年強働いたのだが、業務委託契約だったのとプライベートの予定が全く立てられず(カレンダーの赤文字の日は休みだが、土曜日は出たり出なかったりでしかも前日夜に判明する)、プライベートが荒んだ。
もちろん早く帰れる日もあるにはあったものの、毎日何時に終業するのかが伝えられないし、当日に突然「今日はもういいです」と伝えられる始末だった。
酷いときには、次の日の出勤時間の連絡も来ないし、気を利かせておおよその時間に出勤しても、朝から夕方までずーっと車中で待機していたり(何も連絡がないまま結局、その日は移動予定がなく、出勤する意味あるのかと)、指定された時間に自宅に迎えに行っても、音沙汰なしで3時間そのまま待たされたり(しかも理由が寝坊とか)、役員の出張の予定も聞かされていないので、「空港まで」「え?今日出張に行くんですか!?」というやり取りも珍しくなかった。
おまけに専業主婦である役員の嫁と、こましゃくれた子供2人の塾や学校関係の送り迎えの移動にも容赦なく駆り出された。こっちにだって我が子の学校行事参加を犠牲にして働いていたのに。
待機時間は多かったものの、スケジュール共有の無さ、役員の時間のルーズさが際立っていた。
一度、交差点の角にあるビル前の路肩で降ろして待っていた時、他の車の邪魔になるからと数メートルだけ前に移動して待っていたことがあった。「小1時間」とか言ってたのに、3,4時間経っても出てこないので、LINEで聞いてみると、「ビルから出たときに車の姿が見えなかったのでもう歩いて帰った」と返信が来た。唖然とした。普段、いつ出てくるかはチェックしているので、たぶんビルのもう一方の出入り口から出て来て、ろくに確認もせず、いないと決めつけやがった。「あなたが使えないときにはタクシーで移動する」という発言を聞いたときには「ああ、必要とされていないんだな」と思い、コロナに罹患したときも有給扱いなど当然なく、好きでコロナに罹ったわけではないのに、報酬から日割りで当然のごとく減額された。
年末には役員家族で海外年越しするらしく、「年明けは2日から(海外旅行の帰国の迎えのために)出てほしい」と言われ、こっちだって家族がいるのに三が日ぐらいゆっくりさせろ!と内心思いつつ、積もり積もった不満も合わせて遂に堪忍袋の緒が切れ、契約終了を申し出た。役員は自分と一回りぐらい下の年齢だったが、今思えば1年ちょっとよく我慢したなと思う。業務委託契約の不利な部分が身にしみてわかった。

「役員運転手なんだから、役員家族の送迎も仕事のうち」と諭されることもあったがどうにも腑に落ちず、会社には秘書的な役目の人も存在していないので毎日毎日スケジュールを知っているのは当の役員本人だけで、あまりの自由勝手さと無頓着ぶりに仕える気持ちもゼロになっていた。

そもそも契約自体が書面もなく口頭だけだったので、不安だらけだったのもあったのだが。