うまい話にはやはり訳があった

この1ヶ月間、正直モヤモヤしながら働いていた。
もちろん頑張る気持ちは多分にあったし、多少の苦労は当たり前と思っていたし、せっかく30倍の競争に残った仕事を簡単に手放したくはなかった。けれど、身体が持たなかった。

前回のエントリーで勤務条件を書いてみたが、実態はいろいろと違うことが気になっていた。加えて、役員のまるで掴みどころのない人間性が自分には解せなかった。

 

まず、勤務条件についての相違。

・完全週休2日制(土日)
→基本そうだが、役員が外せない業務(といってもくだらないパーティーや冠婚葬祭)のときは土曜日出勤あり。休みを平日に振替えられる場合は振替えるが、役員スケジュール都合によるので欲しくない日に振替えられる。しかも月をまたいでの持ち越しはできず、同一月内での消化。振替えできなければ(超勤扱いのような)報酬に上乗せ。

・プライベートの運転は皆無
→確かに役員家族の送迎は無かったし、一度も会ったことはない。
ただ、現愛人に加えて元愛人ともつながりがあり、およそ業務とは言いづらい私的な移動(買い物、デート)は担わされる。

・スケジュールの共有が不正確、不明瞭
→カレンダーアプリには予定が共有されているが、場所や手段が明記されていないものが多く、スケジュールの色分け種類が多岐にわたり、いったいどの予定に車移動が必要なのかが不明。「◯◯(社名)会食」と書いてあったが、実際は愛人との食事デートの予定といった具合。「打ち合わせ」や「会議」と書いてあるので、車で外出するのかと思っていたらリモートで済む案件だったとかで乗らず。

・遅くに不便な場所で終業を言い渡され、帰りの電車賃も自腹
→今思えば、面接のときはあまり詳しく説明されず濁されていたような気がするが、基本、一日の終業地は隣接県にある役員別宅になり、そこから20分かけてターミナル駅まで歩いて電車に乗る羽目に。電車賃は自腹。しかも終電前など遅い時間帯がしばしば。一度本当に終電ギリギリだった。これが週に1回とかならまだ許容できるが、ほぼ毎回であり、その日のうちに本社や自宅に戻って終業ということは数えるほどしか無かった。

 

以下は労働環境について。

・役員の生活サイクルが異常
→9時に出社し、午前中から昼過ぎにかけては本社で仕事し、その後に車で隣接県にある他の事務所や取引先を回るパターンが基本。午後は仕事の日もあれば愛人と会う日もある。愛人の日は決まって最後、隣接県にある別宅へ連れ込むので、自分の業務は終了。そこで前述のように放り出される。ただ、ここからが異常で、前夜どんなに会食や二軒目で酒を飲んでいても、愛人と絶倫行為をしても、深夜3時とか4時には自分で運転して自宅に戻り、9時に何事もなかったかのように出社している。マジでショートスリーパーなのかと思った。

・経営者論、ビジネス論、男性論など持論を語りかけてきて同調を促される
→前職の一回りしたの役員との車内での会話は必要最低限で、後部座席では電話してたり、スマホで動画見てたり、飲食したり、寝てたりということがほとんどだった。今回の役員は、本社を出発すると到着まで、毎回必ず世間話や時事ネタを皮切りに、自分の考えやポリシーなどを自慢話や武勇伝を交えて話しかけてくることが苦痛だった。口調を荒らげたりはなかったが、「そうなんですか!?」「すごいですね!」「そうですよね」という返答しかできないぐらいな内容で、反論ぽい返しだと「それは違うんですよ」と否定される。半月程経ったぐらいでは、「もしかしてこの人は妄想癖があるんじゃないか?」「本当の話か?」と疑ってしまうぐらい、自分はすごいんだぞ感を醸し出してくるのが滑稽。

・「経費を意識するように」と言われたが、実際はただのケチ
→最初に「運転手としてもガソリンを始めとして、不必要なアクセル踏み込み等せず、会社の経費なので意識を持って」と言われた。もともとスピード狂ではないので不用意にアクセルを踏んだりすることはなかったし、ハイブリッド車だったのであまり意識していなかった。というのも、前職でも今職でもガソリン代や高速道路のETC代は当然先方持ちなのだが、前職役員は効率重視だったため、任意のスタンドで給油してきても問題なく(しかもハイオクガソリン車だった)、基本通勤に車持ち帰り可であり、自分の自宅近くのコインパーキングに一晩停めた駐車代も預かった小口現金から支払っていた。夏は暑いし冬は寒いので、待機中はいつでもアイドリングしててよかった。通勤に電車に乗る必要があった日には、立替えた交通費を請求できた。
ところが、今役員はそうはいかず、まず待機中はエンジンを切らされる。この時期なのでものの数分で車内温度は急上昇し、窓を開けずにはいられない。もはや車から降りたほうが涼しいと感じるぐらいだが、車から離れるわけにもいかない。かと言って路駐して離れればミドリマンの餌食になるし、どこぞのコインパーキングに入れれば駐車代は自腹。当の役員は、降車時に「日陰とか涼しい場所で(待機しておいて)」と言うが、この時期の日陰なんて焼け石に水で酷暑に変わりはない。日陰を求めて彷徨うと、今度は呼び出されたときにすぐに駆けつけられなくなるという矛盾。
そして異様に燃費を気にしていて、メーター内の平均燃費が0.1落ちたのを気づき(この時は2時間の待機中に暑さで我慢できず、アイドリングしたまま寝ていた)、チクチクと燃費について語りかけてくるのだ。前職役員は自分で運転することが嫌いだった性格もあり、役員車のメーターや状態については無頓着で、最低限自分が行きたいところ時間に移動できれば済んだのだが、今回の役員は毎日一度は自分でもハンドルを握るので、車の状態の変化にはすぐ気づく。燃費然り、車体や車内の汚れ然り。

・役員が乗っていないときの業務移動に高速道路が使えない
→これも前職との比較になってしまうが、前役員はガバガバだったので高速は乗り放題というか、効率重視なので下道でタラタラは逆に不満を抱くようだった。しかし今回は違って、役員が半日ほど出先で籠もる必要があった間、一度本社に書類を届けに往復するよう指示を受けた際、「下道で」と言われたのだ。幹線道路とはいえ片道1時間半弱かかったので、往復で3時間。戻って来て欲しいと言われた時間より1時間ほど前に着いて休憩しようかと計算して早めに復路についたら、途中「早く終わりそうだから。今どのあたり?」と電話がかかってきて、休憩時間の確保ができずに終わり、結局この日は待機時間がほぼなく、朝から夜までずーっと走らせていた。

・毎日洗車は当たり前なのか?しかし作業場環境が良くない
→役員車は毎日洗車するのは当たり前なのかもしれない。実際そう聞くし、そういう職種の人は常に車の清掃は欠かさないのだろう。
今役員も事あるごとに「あそこが汚れている」だの「フロアマットに泥や砂が」とネチネチ言ってくる。そして大抵汚してくるのは土日に役員がプライベートで運転し、どこに行ったかは知らないが、家族が汚したと思しき痕が見られる。こっちは細心の注意を払って運転しているのにも関わらず。
イカーですら手洗いをしたことのない自分には、毎日始業後にとてつもなく表面積のデカい黒の某国産大型ミニバン車を手洗い洗車するのはキツすぎた。
前職は前述のように無頓着なので、月1,2回ぐらいスタンドの洗車機にぶっ込んでいたが何も問題なかった(そもそも購入時点で中古車だったからかもしれないが)。
ところが、今役員は1~3年サイクルで同車種新車に乗り換えていると自負しており、機械洗車には掛けたことがないとのたまった。乗り換えるのは車種柄、値落ちが小さいからとか言っていたが。
そしてこの手洗い洗車をする場所は本社の駐車場なのだが、半地下で空調設備もない一番奥まった場所にあり、出入り口が1か所のみなので風通しも悪い。照明は非常灯とそれに似た光度の低い蛍光灯だけなので、黒色のボディに微々たるキズがあっても汚れがあってもパッと見はよくわからない。スマホのライトで照らしてみてようやくわかるかなぁという始末。スマホのバッテリー消費も自腹なのか?
洗車グッズは前任者が使っていたものを使っていいらしく、立て替え払いで補充してもよいとのことだった。なぜ洗車用品だけ立替え請求OKなのか?
洗車に慣れていないせいもあったが、毎回1時間半から2時間は要した。直射日光は当たらないが、作業すれば全身汗だくになり、下着は絞れるぐらい汗を含み、終わると屋外にある他店の室外機から出る生暖かい風すら涼しく思えた。
正午またぎの数時間はこの洗車時間で潰れ、そこから役員が突然乗り込んで来る時もあれば、1~2時間休憩できる時もある。休憩時さえ役員車のエンジンをかけることはタブーなので涼しい場所を求めることもできない。隣には通勤に使用しているマイカーを停めてはいるが、自分の車のガソリンをそのために消費するのも馬鹿らしくなってきた。
いざ役員がやってくると、タオルでしきりに汗を拭き、びちゃびちゃのワイシャツやスラックスのまま車を走らせるのだがそれに対して言及はされない。走行中はもちろんエアコンが効いているので一気に涼しいのがいいが、汗を大量にかいているので体から熱を急激に奪っていき、寒さを感じる。それで今度は待機中にまた暑くて汗が吹き出るという繰り返しなので体への負担が強く、汗をかきすぎるので背中や腰に汗かぶれができ、かゆみとの戦いも余儀なくされた。少し学んで、いつからか着替えの下着Tシャツを持参するようになり幾分ましにはなったが、汗を含んだ下着を袋に入れて鞄にしまい、拘束時間の長さから帰宅後にすぐ洗濯機にかけられず、衣類の臭い問題も生じた。

・ビッ◯モーターのようにパワハラはなかったが、陰湿な指摘

今世間を賑わせているブラックパワハラ企業ではないように思えるが、実際はよくわからないし知らない。しかし、ある時届けるように指示された書類を覗き見たら、別職種の社員(たぶん同じく雇用ではなく業務委託っぽい)の日報らしきものだった。
そこには始業終業時間はもとより、社用車のオドメーターを記入する欄、燃費の欄まで設けられていて、別の書類にはそれを統計化したランク付けみたいな評価表のようなものまであった。どこまで燃費に拘るのか…。
怒鳴られたり、蹴られたりということは一切なかったのだが、嫌味は時々受けた。
本社の地下駐車場はそんなに広くなく、最大7台が壁に沿って放射状に駐車できる感じなのだが、そもそも駐車場の形状が長方形とかではなくいびつな敷地であり、道路から短いスロープになっている出入り口も車1台しか通れない。駐車場の中に車が少ないときには、入り口で前から突っ込んで中の空いたスペースで切り替えして方向転換できるのだが、結構車が入っているとデカい車は中で方向転換できなくなる。駐車場は薄暗いしすぐにクランクの形状になっているので、外からは今何台車が居るのかはわかりづらいのだ。
ある日、役員が一緒に乗っていて頭から駐車場に入れようとした時に「中に車が多かったらどうするの?ここはケツから入れないと」と言われた。まあそれは正論だと思う。それで恐る恐るゆっくりと後進させながら、駐車場の中に入っていくと、いきなり別の車が停まっていて、衝突回避アラームがピーピー鳴るので一旦前進して切り返したときのことだった。「何してますのん?」「もしかして鈍臭い?」「私はどんな駐車場でも(切り返しなしで)一発で入れるよ」「役員運転手で入れられなかったら笑われますよ」と嘲笑された。「不慣れなのもありますし、万一ぶつけたり擦ったりするより、切り返した方が安全だと思うので」と返事するのが精一杯だった。何よりハンドルをぐるぐる回してる最中だったし。
別の時はただのコインパーキングでのこと、枠内から少しズレそうだったので、切り返したときも「何してますのん?」と言われた。
そんなに切り返しなしで駐車できることが偉いのだろうか?いったい誰が笑うのだろうか?「そんな(切り返しの多い)運転手を雇って」って笑う人などいる世界なのか?
全部勝手な被害妄想だと思うのだが、そんなカッコつけの役員なんて願い下げである。
もう一つ、「役員運転手が他の運転手と違うことはなにか?」と問われたことがあった。「安全にスケジュールどおり目的地まで到着することでは?」と月並みな回答をしたが、応えは「役員に出来るだけ歩かせないこと」と言われた。
それはそうなのだが、ある日、一方通行の幹線道路沿いにある建物の車寄せへの入り口に近づいた時、早めに到着したので入り口より3メートル程先の路肩に停車するように言われたことがあった。10~15分経った後、予定時間が来たのでそのまま降車して建物へ向かうのかと思いきや、「じゃあぐるっと回って(車寄せに)付けてくれる?」と耳を疑う言葉が。ぐるっと回れば右折が連続し、途中に信号が2つあるので引っかかれば5分程かかる。このまま降りて後ろに10歩ほど歩けばすぐ建物の入口である。どんだけ非効率なのか。それぐらい歩けよと言いたい。

1ヶ月で辞めます

そんなこんなで、交通費を始めとした様々な自腹を切らされ、朝遅い始業とはいえ拘束時間が長く、家族とのすれ違い(家で顔を合わせることが減った)が起こり、知りたくもない話を延々と聞かされる、最後は嘔吐し軽い熱中症になりかけ、この先社保料も自分で払わなければならず、月額固定の報酬から諸々差し引くと額面通りに見合った業務とは思えず、何より精神的<身体的に健康を脅かされそうなので、一昨日を以て契約終了を申し出た。そしたらLINEに「辞めると思ってました。ちょうど今日が締め日なので大丈夫です。返却物は近日中に返しに来てください」という無神経でそっけない返答があった。

ま、書面上1ヶ月単位の更新契約だったし、試用期間と思わせれば、もう1ヶ月我慢しようかな?と悩む必要もないし。
ただ、気になるのは契約書には報酬の振込みは当月分を2ヶ月後にって書いてある部分で、普通、翌月だろ?と思いながらまだ支払われるのか疑っている。

そういや、今日鍵などの返却物を返しに事務所に行ったら、地下の駐車場には役員車が出払っていて停まっていなかった。その時間帯を狙って行ったこともあるけど、マイカーを駐車していた場所には見慣れない車が停まっていた。たぶん辞めた(といってもまだその人物とはやり取りがあると言っていた)前任者を呼び戻したのだろうと推察できた。なんだ、自分がいなくなっても何も支障がない世界なんだね。
清々した。